Monday, March 23, 2015

背徳の30分

屋上の温水プール
Spa Castleという、いわゆるけんこーらんど的なものがあると以前友人から聞いていたので、土曜の昼間に出向くことにする。それにしても近い。家から車で10分かからないような所にそれは建っていた。寒くなる度に日本のお風呂に入りたいと思いながら自宅のバスタブにお湯をはるも、底は浅いわ、お湯はすぐに冷めるわで、余計に疲れてしまう。アメリカの、こんな所にある施設、温かいお湯に足を伸ばして入れるだけでもいいか...期待値はゼロであるが、水着とタオルだけ抱えて入館する。

建物の中はかなり広く、入ってすぐに男女別れるロッカーがある。脱衣所の脇には結構立派な大浴場風なものがあり、早速服を脱ぎ捨てて走り寄りたい感情を抑えて、水着に着替え、その上にフロントでもらったTシャツと短パンをはき、旦那の待つ2階へ出向く。2階はフードコート、サウナと休憩場があり、早速腹ごしらえをする。1ポンド$12とかなり割高のバイキングではあったが、クオリティの高さにびっくりする。コーンとカニのサラダも、韓国風ピリ辛おそばも、チキンとアスパラのごまサラダもうまい。ちょっとヘルシーなメニューに旦那はげっそりしていたが、私は大満足でランチを終えた。

ランチの後、旦那の方を伺うと、フロントでもらったはずのシャツも短パンもはいていない。どうしたのかと尋ねると、着るタイミングが分からないという。「タイミングってなんだよ。」少々呆れながらも、まぁいいかと、一緒に入れる屋上の温水プールへ向かおうとすると、やっぱりロッカーに戻って着てくると言い出す。メンドクセーと思うがすぐに行ってくると行って聞かず、そそくさと階段を下りていった。数分して戻ってきた旦那と共に屋上へ。ニューヨークは、前の日に雪が降っており、屋上にもかなりの雪が積もっている。そのうえ吹きさらしの屋上は、一瞬でカラダの芯まで冷える程の風が容赦なく吹き付けてくる。はやいところあったかいお湯に飛び込まなければ風邪を引いてしまう。もらった制服(?)を脱ぎ捨てて水着になり、飛び込もうとする私を旦那はきょとんとした顔で見つめてくる。「What?」あまりの寒さに自分で自分を抱きしめながらその場駆け足で旦那の方を向くと、彼氏はさっき、制服に着替えた時に自分の海パンを脱いできたという。「その制服でお湯に入るつもりでいたの?」クルーレスにもほどがある。だってとか意味が分からんとかブツクサ言う彼に、「私1人で入ってるから早く着替えてきな」イラダチを隠そうともせずに言い放つと、私は彼の返事も待たずに踵を返した。
これにやられた。

「...」ヌルい。確かにお風呂という習慣のあまりないアメリカでは、これくらいの温度で、お風呂というより浅いプールに近い感覚の方があっているのであろうが、それにしてもヌルい。あげくに最近のキックボクシングのせいで多少体重が落ちたのか、去年の夏ちょうど良かったはずの水着がブカブカである。2ピース上下どちらもかなりおかしい。上から制服を着た時にはそう感じなかったが、歩く度に下のスカートがずり落ちるし、ジャグジーの、泡のでる方へ近寄ろうものなら、上の方は誰にも望まれないポロリは必至である。リラックスもなにもあったものじゃない。プールの隅でおとなしく旦那の戻るのを今か今かと待っていると彼氏はようやく現れた。プールの反対側に、勢い良くお湯のでる”滝”があるから行きたいというので、歩いているうちに素っ裸になって周りに迷惑をかけないように、用心しながら水着をおさえて行ってみると、何人か”滝”に肩や首をうたれてキモチ良さそうにしている。なるほど、これはいいかもしれない。やってみたいけど眼鏡をどうしようかと悩む旦那を尻目に、早速滝の下に入るも、お湯がいっこうに出て来ない。見れば、蛇口の脇にボタンがあり、それを押すとお湯が出る仕組みになっているようだ。ボタンを押して、首を傾げ、肩を出すが、お湯はそれでも出て来ない。おかしいな...もう1度ボタンを押し、それでもウンともスンともいわないので、蛇口を覗き込んだ瞬間に、「ゔっ」勢い良く出た水に顔面を嫌という程打ち付けられる。後ろで旦那の大爆笑が聞こえる。こんなドリフみたいなことが実際に起きるとは思わなかったが、水着が無事だったのがせめてもの幸いである。「あっちに檜風呂がある!」私はその場から逃げるように立ち去った。

しばらく檜風呂を堪能した後は、下へ下りてサウナに入ることにする。温度によっていくつかのサウナがあるが、真ん中位の温度のサウナを選び、腰を下ろす。「あ゛−」少し目でも閉じてリラックス...と思ったら旦那に肩をつつかれる。「What」愛想なしに振り向くと、サウナで眼鏡はイヤだから、ロッカーに置いてきたいという。置いてくればいいじゃんと言うと、眼鏡を外したら何も見えなくなるから、ロッカーの入り口まで迎えにきてくれと言ってきた。「はぁー?!」迷惑千万である。迷惑千万とさえ言ったかもしれない。てゆうか言うなら座って落ち着く前に言えー!!私は憮然として立ち上がると、後ろの旦那の方には目もくれずに出口へと急いだ。眼鏡を外して戻ってきた旦那の手を引き、再度サウナに挑戦する。しかし5分もしないうちに旦那のわざとらしいため息が聞こえる。しばらく無視を続けたが、敵も諦めない。「今度は何ですか」嫌味たっぷりに質問すると、暑いしつまらないと言いやがる。殴り掛かりたい衝動を拳を握りしめて抑えつけると、「俺は出てるから好きなだけ入ってれば?」そう言う顔は、私を見ていない。真隣にいる嫁の姿も見えず、かわりに知らない人に話しかける程の視力でどうやってここから出てロッカーまで行くというのか。やれるもんならやってみろと言いたいのをグッとこらえて、私は再び彼の手を引くと無言でロッカーの方へと歩いた。

眼鏡をかけ直して戻ってきた彼とこれからについて話し合う。私は何としてもロッカーの脇の大浴場に入りたい。旦那と1時間半後に待ち合わせをすると、私はロッカーへと走った。大浴場にもサウナがある。リベンジとばかりに入って腰を落ち着ける。しばらくすると、「Body Scrub」つまりあかすりのサインが目に入る。かなりやってほしい。30分、$50をフロントで払い、大浴場の脇で待っていると、韓国人のオバチャンがやってきた。上下黒の総レース下着である。オバチャンは、びっくりして声もでない私の手を引き、風呂場の脇のあかすりコーナーへと歩いていき、プラスチックのベッドに横たわるよう促す。誘うような、真っ赤な色のベッドに横になると、オバチャンは私の上に覆い被さった。言っておくが、ここは女性専用の風呂場であるために水着は許されておらず、私は素っ裸である。そこへ、頼んだといっても上下黒レースのオバチャンが自分の上に覆い被さってきたら軽くパニックである。思わずぎゅっと目をつぶると、細長いタオルを目に当てられ、きつめに目隠しをされた。目はもう見えないが、オバチャンが私の脇で準備をしている気配がする。ここで使っている石鹸なのか、オバチャンからはいいにおいがする。もうこうなったらまな板の上の鯉である。自分で申し込んでおいてなんだが、まさかこんな展開になるとは思わなかった。ドキドキする私をよそに、オバチャンはそれこそ車でも洗うような感じで私のカラダをこすりはじめた。

あかすりのコーナーといっても、風呂場の隅の少し奥まった所に設備があるだけで、別に壁やしきりがある訳ではないので、お風呂に入っている人の声がすぐそこで聞こえる。風呂も何種類かあるので、小さな子供が「ママー、今度はこっちに入りたい!」と、無邪気にはしゃぐ声も聞こえてくる。目が見えないだけに周りのことが余計に気になる。土曜の昼間から、真っ赤なベッドに裸で寝かされて、黒レースのオバチャンにカラダを預けていると思うと、もういてもたってもいられない。あかすりそのものはキモチがいいので余計にタチが悪い。真っ赤になって唇を噛み締める私をよそに、オバチャンは私をあられもない体位にして責め立てる。かなりドギマギしてきたころ、オバチャンは私の顎をつかむと、クイッと持ち上げた。

「え...」あまりの驚きに声が漏れてしまうが、聞こえたのかどうか、オバチャンは私の首を丁寧にこすっている。あー、そういうことか。オバチャンは苦笑する私をクルリと横にすると、今度は後ろから抱き締めた。

身を堅くする私の脇腹をこすると、今度は逆向きにひっくり返される。咄嗟に魚市場のマグロを思い出す。キツく縛られた目隠しのおかげで何も見えないのには変わりがないが、オバチャンが動く度に彼女の胸が私の腕にあたる。私は今まででこんなに気まずい思いをしたことがあっただろうか。オバチャンを突き飛ばして走り去りたい気持ちとの、葛藤の居心地の悪いことと言ったらない。自分の精神にダメージを与えるために$50払ったようなものである。それにしても、オバチャンはことあるごとに私の顎をつかんではクイッともちあげてくる。これで最後の会計で壁に手をドンっとつけられた日には、私は彼女に交際を申し込んでしまいそうである。背徳感満載の心を持て余しているうちに作業は終わり、最後に髪を洗ってもらって終了となった。日本であかすりをしてもらったときとは全く違った体験だったが、どちらの方が主流なのであろうか。シャワーをしっかり浴びて、少し熱めの風呂を選ぶ。やはり日本人にちょうどいいと感じる温度はこちらの人には熱すぎるらしく、その湯船につかるのは私しかいない。手足をゆっくり伸ばして肩に触れるとびっくりする程スベスベしている。ホッとした気持ちで風呂場の時計を見ると、約束の時間まであと15分である。私は慌てて立ち上がると、脱衣所へと急いだ。

待ち合わせのロビーにでると、旦那の姿が見えない。約束の時間までにはまだ少しあるが、私の方が早く出るなんてあるわけがないと思い、電話をかけてみるとすぐにつながった。「車寄せてあるから」彼はもうとっくに出て車を取りにいっていた。ビルから出て車に乗り込むと、どうだったと聞かれる。オバチャンとの体験談を話すには疲れすぎている。「I had a good time.」曖昧に笑って旦那の方はどうだったと聞くと、1時間半後と約束して私と別れてすぐに、彼は風呂に入ることをせずにビルを出て、今まで車で待っていたという。怒ったらいいのか、呆れたらいいのか、それとも、まぁ、なんて優しいんでしょうと目を輝かせたらいいのか分からない。普段一緒に行動しない理由を思い出す。火照ったカラダを冷まそうと車の窓を少し開ける。帰りの車から、そろそろ陽の沈みかける町並みが見える。その時初めて自分のカラダがオバチャンと同じ匂いがするのに気がついた。

Sunday, March 22, 2015

最近のカラダの事情〜其の2〜

キックボクシングのクラスはウォーミングアップの段階から半端なかった。ジョギング、に始まりスクワット、腕立て伏せ、ストレッチ...勢いのみで入会した私は、正直言ってジョギングの時点で後悔大爆進だった。文字通り、私の前を他の生徒でも、先生でもない、後悔の念が走っている。遥か昔、義務教育を受けていた頃のマラソン大会を思い出す。あまり広いとは言えないジムの仲を、大音響の暑苦しい音楽の中グルグルと走りながら、私の思考が昔のイヤな思い出と共にこれまたグルグルと回りだす。後悔の念と共に、汗だか涙だか分からないものが私の頬を伝う。開始5分で私の心は複雑骨折している。ブタが走れないのは周知の事実である。今更私がギブアップしたところで誰も驚くまい。それにしてもどれだけ走るつもりなのか。哀しくなり、バキバキに心が折れて弱気になった後は、無性に腹が立ってきた。前を走る結構ステキな容姿の先生の背中を睨みつけ、「いいかげん、あと1周で終わってくれよ」と念を送るが、彼氏はそんなことおかまいなしで、「Whoooooooo!!!!!」とゴキゲンで走り続ける。ようやくジョギングが終わった頃、私はどんな思いも感じられない程疲れていた。

ジョギングの後も、私を叩きのめすために考えられたとしか思えないような恐怖のメニューは続く。鬼のようなスクワット、腹筋、腕立て伏せ...汗さえかかず、息も乱さずこなしていく先生に憧れと、尊敬と、ちょっぴりの乙女心が柄にもなく顔を出してちょっとニヤけてしまう。「どんだけ運動バカなんだよ」ボソッと呟いたとたんに先生がこちらを向く。キラキラした笑顔をむけて、私にハイタッチをしてくる。「A+!! Great job!!」ヤメてーーー!!優しくしないでー!!そして笑顔を向けないでーー!!ここまで人に対してぎこちないともう漫画である。ストレッチに入る頃には、まさに満身創痍であった。

それは急に起こった。

「はいじゃあ次は目を閉じて首を回して...」先生の声に倣って目を閉じ首を後ろに傾けたとたんに目の前が真っ暗になった。周りが見えなくなったのは、目をとじたからだけではないらしい。生まれて初めて意識が遠のくという経験をした。先ほどの先生の満面の笑みとハイタッチを思い出す。一瞬夢を見ているような気がした。連日の寝不足、急激な運動、そして朝から何も食べていないとなれば当然である。これ以上何が必要というのか。ハッと正気に戻ると同時に色々なことが頭をよぎる。確かに私にとってはハードでも、授業が始まって僅か20分である。ここでブー子の私が初日、面接であんなに暑苦しいことを言ってのけた後にウォーミングアップの時点でぶっ倒れるなんてありえない。ハズカシいにも程がある。ふと気を許すと手許からすり抜けそうになる意識を、手放すもんかと意地と見栄のみでにぎりしめる。ストレッチが終わると先生が各自水を飲むように小休憩をくれた。ヨロヨロと自分のカバンのもとまで這っていき、水を出す手はものの見事に震えていた。

その後は、サンドバッグを引っ張りだしてきて、打撃の練習に入る。「Left jab, left jab, right cross and right round house kick!!」は?である。なんのこっちゃわからない。何度かゆっくりとお手本を示してくれる先生を穴のあくほど見つめるが、それでも私の顔から巨大なハテナマークは消えてくれない。仕方ないので見よう見まねでバッグをどついてみる。「!!」右肩に激痛が走って息が詰まる。右肩を抑えて、口をパクパクしている私を、友人が隣で体を2つに折って笑っている。ようやく笑いの収まった友人が挑戦している時に先生がやってきた。「まずは、速くなくても、強くなくても、自分でリズムをつかみながら距離を置く練習をすること。型なんて、やってるうちについてくるから心配しないで。」親切に、根気よく丁寧に教えてくれる先生を見ていたら、喉の奥が痒くなってきた。いてもたってもいられない気持ちになり、蕁麻疹まで出てきそうである。恋する中学生だってこんな挙動不審にはならないであろう。この歳になって人に免疫がないなんて親の顔が見てみたい。自分の焦りを悟られないように私は構え直すとバッグに向かって思いっきりキックをきめた。

怒濤の、としか言いようがない1時間は、思いのほかあっという間にすぎてしまった。ホッとしたのも束の間、先生が私と友人を事務所に来るように促す。何も言われないうちから怒られるのだと思い込む。人嫌いで目立ったりすることがイヤな性格の割に、中学、高校はずっと生徒会の副会長をしていた。真面目というよりは面倒くさがりで、問題を起こして職員室に呼ばれたことなど一度もなかったが、なんとなくそんな気持ちだ。重い足を引きずって事務所に行くと先生が満面の笑顔で迎えてくれる。私は思わずうつむいてしまう。先生に促されるままに椅子に座ると、初めての授業の感想を聞かれた。友人は、キツかったけど楽しかったと喜々として語っている。次に回ってくるであろう私の番を思って気が重くなる。クラスそのものは良かったけど、何かする度に周りの人にハイタッチをしなければいけないのが苦痛でめんどくさい。なんて言えないよね、さすがに。正直な感想が言えないので私も曖昧に業務用笑顔を顔に貼付けて「Me, too.」右に同じですと大して聞いてもいなかった友人の感想に便乗する。先生は満足そうにうなずくと、今後のことを聞いてきた。グルーポンで買ったパッケージは、10回レッスンである。正規の年会員にならないかと誘われて、ああそうかとやっと納得がいく。気合いが足りないとか、どんくさすぎるとか、愛想がないとか叱られるのかと思ったが、そういうことか。面倒なので説明もろくに聞かないまま入りますというと、驚きながらも嬉しそうに先生は「良かった」と握手を求める。隣で友人が少し戸惑っている。彼女は先生にいくつも質問をしている。それが普通である。質問もせずにこんなにスンナリと入会しますなんて言う人がいたのであろうか。今まで霊感商法に引っかからなかった自分が不思議である。友人と先生のやりとりを傍観して、初めて月謝の額を聞いてびっくりする。「高っ!」想像していた額の倍以上である。正会員は、同じ月謝で月に何度でもクラスに来ることが出来るから、行けばいく程1クラスあたりの値段が安くなる計算であるが、クィーン•オブ•三日坊主の私にはバカ高い月謝である。それも1年契約なので、3日でやめても1年間月謝を払い続けなければならない仕組みになっている。隣の友人はまだ迷っている。私は真剣に後悔している。でもやっぱりやめますなんて言える度胸も、状況でもない。その後、友人は先生にもういくつか質問をした後に入会を決意した。「アリサと2人ならお互い励まし合って通い続けられるよね!」無邪気な笑顔が眩しすぎる。3か坊主になって、彼女にまで迷惑をかけてしまった暁には、責任を持って彼女の月謝も払わなくちゃ...かなり感覚のズレた決意をしながら私と友人はジムを出た。

後日談

「!!!!!!!!!!!!」最初のクラスから3日後の朝、目覚ましを止めようと寝返りを打って手を伸ばそうとすると、カラダ中に電気が走るような激痛を感じて一気に目が覚めた。「私、縛られてる!!」咄嗟に見当違いな思いがめぐり、パニックになる。私が目を覚ましたのをいいことに、ワンコのたっちゃんが私の上に覆い被さってくる。「ギャー!!」あまりの痛みに息が詰まり、愛娘をつきとばす。そこでハッとする。ま、まさか...あれだけハードな運動をしたのに、翌日筋肉痛がなかったのですっかり忘れていたが、3日たってからくるとは...生憎その日はマンハッタンまで出かけなければならない用があり、地下鉄の階段は上りはなんとかなっても、下りの大変なことといったらなかった。一度足を踏み出したら、もう太腿が言うことを聞いてくれない。ガクガクと震えだして止まらないので、下りは一気に駆け下りる...猪突猛進のテキスト例のようである。階段を駆け下りるというよりは転がり落ちながら、私がキックボクシングを始めようと思ったきっかけを思い出す。地下鉄の階段で苦労するようなカラダにうんざりしてたんだよな、確か。キックボクシングを始めたとたんに今度は下り階段を命がけで駆け下りている今の自分の皮肉な状態を、まるで人ごとのように思いながら地下鉄に飛び乗った。


Monday, March 9, 2015

最近のカラダの事情〜其の1〜

根っからの飽きっぽい性格のおかげで、大抵のことは3日坊主で諦めてきた。日記然り、文通然り、ジム通いも例外ではない。長い間、ジムに月謝と言う名の寄付をしてきたようなものである。ジムに通うことはおろか、止める手続きをするのも面倒くさいのだから手に負えない。あの月謝、いや、寄付金が今あれば、優に日本行きの往復ビジネスクラスのチケットがペアで買えるであろうが、後の祭りとはこういうことを言うのであろう。それでも何年か前までは、正月が来る度に一念発起したつもりで新しいことに挑戦したり、結局しなくても、しようという思いはあったはずである。それが最近ではどうだろう。去年なんて、パーティーにも行かず、家でひっくり返ってプロレス•オンデマンドを観ていて、カウントダウンも逃してしまった。最近、心身共にタルみすぎている。地下鉄の階段も上がる前に上を見上げてうんざりしながらも、顔だけは童顔なので、途中で息があがって、「若いクセに」と、周りに笑われないように、プライドというよりは、意地から自分に喝と気合いを入れなければいけない程である。

つい先日のことである。

ワンコのママ友とランチをしていて、ちょっとしたことからキックボクシングの話になった。「そういえば、グルーポンにキックボクシングの安いクラスが結構出てるんだよね。」興味本位で調べてみると、1件出ている。10回のクラスで50ドル、つまり1クラス(1時間)あたり5ドルと、リーズナブルなお値段である。場所も、家から車で10分かからないところにある。ちょっとした偶然が重なり、最近のブルーな気持ち、そして何よりやってみたいと目を輝かせる友人の手前、後には引けなくなってしまった。「ホントに大丈夫かな」不安な気持ちから、ヘンな、高揚にも似たテンションになって、お酒も飲んでないのにハイな気分で、友人と共にその場で決済を済ませた。その翌週の月曜日、私達はジムへと足を運んだ。

ジムは、Jewish Community Center のビルの4階にあるが、建物の前にも、周りにも、看板や、宣伝らしきものは一切見られない。Jewish Community Center とは、ユダヤ教信者の人達が集まれるホールがあったり、地域の慈善事業をしたりするビルである。事前に電話をしておいてよかった。こんな所、誰が話もなしに分かるというものか。話してたって、ビルの前で半信半疑でお上りさんよろしくキョロキョロする始末である。意を決して、私と友人はビルへと歩いた。

ジムは4階と聞いていたが、エレベーターには3の階数までしかない。側にいた人に尋ねると、3階でエレベーターを降りて、あと1階分は階段を使うとのこと。言われたとたんにイヤになった。運動前から運動するなんてあり得ない。ここまでだって、できることなら担架か車いすで来たいくらいである。階段を上る私の顔は、きっと憮然としていたに違いない。

ジムに着くと、クラスの前に少し話を聞きたいと言われ、事務所に向かう。そこで軽い面接というか、インタビューを行った。インストラクターの先生に申し込み用紙を渡され、記入するように言われる。そこには名前や住所だけでなく、このジムに入る動機や、最後までやり遂げられる意思の有無を1から10の数字で答えろとある。グルーポンで安売りしていたから、等と書いてもいいのだろうか。でもあまりにキレイごとで、歯が浮く様なことは書けないし、イヤイヤ、いっそここは自分に檄を飛ばす意味でも、暑苦しいことを書いてみようか...事務所の壁にかかっている賞状をぼんやりと眺めながらそんなことを考えていると、隣の友人はもうさっさと書き終えて、記入用紙を先生に返しているところだった。まだ半分も書き終えていない私はハッとする。運動ならず、思考までどんくさいなんて、どこまで恥ずかしい奴なんだ。歳に似合わない赤い顔で友人を見上げると、彼女は私の手許を覗き込み、おかしそうに笑った。「アリサ、先生専用の記入欄にまで書いてるよ」ハッとして用紙を見直すと、生徒が書くのは名前と、住所、電話番号くらいで、動機やその他はSTAFF ONLYとなっている。それもご丁寧にすべて大文字で記してある。私の焦りはマックスである。泡食ってそれまでかいた能書きの上にボールペンで線を引く。急いで先生に返すと、「あれ、なんで消しちゃったの?そのまま使おうと思ってたのに」友人がいなければ、その場で最敬礼をして帰っている所である。もう汗をかいている。先生の苦笑する顔をまともに見ることが出来ずに、私はまた壁の賞状へと視線を向けた。

「あなたはなんでこのジムに興味を持ったの?」先生が、まず隣の友人に聞いている。「少しでも、自分の病気と向き合って、症状を和らげたいと思っているからです。」彼女は、先天性の肺の病気を患っている。27の若さで、これより酷くなれば肺の移植を受けなければならない程で、少し走ったりするとかなり咳き込んだり、去年も一般的なただの風邪をひいただけにもかかわらず、肺が弱いため、10日程入院するハメになってしまった。かかりつけの医者には、たとえ咳が出ても、運動をして、肺を鍛えることが病気を少しでも良くするコツだと言われたという。他にも色々な病気を抱えている彼女であるが、いつも明るく、笑顔のステキな、ホントに可愛らしい女性である。彼女と知り合ったのは、去年、彼女と私が犬を連れてくる公園で話したのがきっかけであった。人見知り、というよりは極度の人嫌いの私の警戒を一瞬で和らげてしまうような笑顔で、「私の犬とあなたの犬は本当に仲良く遊んでるから、もし良かったら、今度から電話し合って公園で待ち合わせしましょうよ」と言われたのが馴れ初めである。それからというもの、会わない日はない程いつも一緒にいるような仲である。今でも、あの公園で声をかけてもらってホントに良かったな、としみじみすることがあるくらいだ。これ以上彼女のことを書き連ねると、恋愛感情があるような響きになってしまうので、というかもうなってるかも、という考えはこの際無視して、話を元に戻すことにする。一通り話を終えた後、先生は私の方に向き直った。「アリサは、どうしてここに来ようと思ったの?」あんなに時間があったのに、そして質問も分かっていたのに、ここにきて言葉に詰まる。自分の思考の小旅行癖を恨みたい。場所もわきまえずに、彼女との友情を想ってしみじみしていた自分はつくづくアホである。単細胞のパッパカパーである。咄嗟に、「自分自身の乱れた生活ーライフスタイルーそのものを見直したいと思ったからです。」口からでまかせの割には随分と殊勝なことを言ったものだ。いや待てよ。案外今のがホンネだったのかも。もう地下鉄の階段を睨みつけるのも、角のコンビニに行くのに車を出そうかと真剣に悩むのも、ワンコのたっちゃんに自分の所までリモコンを持って来させるようにしつけようかと考えるのにも嫌気がさしていたように思う。自宅から、フリーランスの翻訳家として働いているため、普通の会社通いの人のように外に出ることはない。たっちゃんをドッグランに連れて行くのと、たまにスーパーでまとめ買いをする以外、人嫌いで出不精の私はまず家にいることが多いし、特に、スタテンと違い、人の多いクイーンズに引っ越してきてからは、極力外出を避けていた。私は、自らが周りに建てた壁のせいで、息が出来ないような、日の光があたらない、暗い場所に閉じ込められたような気持ちになっていたのかもしれない。先生は、感心したように私を見据えて、「あなたにとってこのチャレンジを成功させることの大切さは、1(最低)から10段階(最高)のなかで言うと、どこになりますか?」「10です。」私は間髪置かずに切り返した。切り返しながらも、こんな所で、「てゆうかどっちでもいいので1か2です。テヘッ」なんて言うバカがいるのかね。と、天邪鬼で、カワイくない私は頭の中でそう皮肉った。先生は私達両方を見つめると、「入会おめでとう。僕や、他の先生が真剣にキミ達のゴール達成を手伝うから、何かあったら遠慮なく言ってね。」固い握手の後にグローブを手渡されて、今、やっとクラスが始まろうとしている。

Saturday, March 7, 2015

How many tomatoes does Wumpan give for these movies?

I have 100 tomatoes to give for each movie I watch. No, tomatoes are fresh and NOT ROTTEN. Some movies are old and some are new. I give out tomatoes based on my biased yet honest opinion. Let me know if you agree/disagree!

American Sniper 58 tomatoes
Dir: Clint Eastwood Star: Bradley Cooper
The story itself is intriguing. But the movie dragged. The wife was annoying. Although I didn't know the story before seeing this movie, I saw the ending coming. Since the movie is not suspense, it may be ok for the ending to be predictable, but I definitely took my last few slurps of my soda and got my things together 10 minutes before the movie ended. Bradley Cooper didn't even look like him. He was huge. I mean, he was huge. The Hulk huge. 

Captain America ~Winter Soldier~ 64 tomatoes
Dir: Anthony Russo Star: Chris Evans
Captain America is one of my favorite superheroes, but this movie was a bit disappointing. They made the story more complicated than necessary. Since they tie some characters (and their movies) to Avengers, there seemed to be many loose ends. I mean, the city was in total chaos. Where is Iron Man? Why is Black Widow the only one available? What happened to Hawkeye? Nick Fury's first mate/assistant looked so different from the Avengers movie, I didn't even recognize her and was wondering who she was until almost toward the end of the movie. Chris Evans' voice always gets me though. I don't know what it is or why it is but it's just yum. He will always be my Captain America!


Whiplash 75 tomatoes
Dir: Damien Chazelle Star: Miles Teller
I watched this movie only because Dr. Skoda from Law & Order is in it. I love Dr. Skoda!! His character in this movie is so different from the cool and calm psychiatrist that I know from L&O. My god, the mouth on him!! I thought the ending was a bit overworked, yet ended abruptly. I had to hold myself from giving a few more tomatoes only because no one cute was in this movie. I know it's a stupid reason, but hey, I am no critic and they are MY tomatoes. I can do whatever I want with them!!

Foxcatcher 48 tomatoes
Dir: Bennett Miller Star:Steve Carrell
Make up is a wow. Steve Carrell didn't even look like him. Channing Tatum looked a bit different, but he was still smoking hot. The movie dragged and the only reason I watched it until the end is purely because my man was in it. So, that should say a lot about this movie. I kind of lost Channing Tatum's character-how he became to despise Steve Carrell. This could either be because my brain shut down and my eyes just enjoyed watching his body, or the movie failed to portrait the characters well. 

Iron Man 68 tomatoes
Dir: Jon Favreau Star: Robert Downey Jr.
Iron Man is my second least favorite superhero in Avengers. I so was not interested in watching this movie, but 2 days of being snowed in can do strange things to you. It wasn't as bad I thought it was going to be. Although I HATE when superheroes get a girl, I was actually waiting for him to be with Pepper. (By the way, what a stupid name, Pepper! Glad she isn't a doctor.)






The Final Destination (4th one) 10 tomatoes

Dir: Davi...who cares Star: Really, who cares
Though this sequel doesn't have the actual number, this one is the equivalent of the fourth one, I believe. The only thing that is going for this movie was, that it was short. I know you can't go too far with the idea of "fate of death", but I like all the first 3 sequels. I feel like people who made this movie were just checked out. "Hey, no one is expecting a good movie out of us, so let's just have a bunch of crappy scenes with crappy effects and throw some racial profanities around." I will be watching the 5th one this week, but I hope it won't be as bad...or at least it'll be shorter than this pile of crap.



Let's Be Cops 70 tomatoes

Dir: Luke Greenfield Star: Jake Johnson
So who is this Jake Johnson guy? Is he the less popular version of Jessica Biel? He was a guy in a TV show and one day, busts out in movies? I enjoyed this movie though some jokes were tacky and mysterious. And even though I wish to tell you some of the funny parts of the movie, I can't remember any of them. I don't think it's necessarily a bad thing though. For me, at least, comedies should be light, tacky, haha funny and forgettable. I was simply entertained for a couple of hours. I don't expect more from comedies. The silliest joke was, though, that Damon Wayans was a game maker who is a push over loser with a 6 pack body. I know, really.

The Haunting in Connecticut 78 tomatoes
Dir: Peter Cornwell Star: Kyle Gallner
The star's mother is Virginia Madsen, a.k.a Cassandra-Frasier's ex girlfriend. Why did they cast her? So she broke up with Frasier and married this guy, then had a couple of kids, and experience some paranormal events? I was so hung up on Frasier, I couldn't focus on the movie. Therefore, I totally missed the important part of the movie-is the kid from the past good or bad after all? And the priest looked like the old version of Elliot Stabler from L&O SVU. I always do this. I get so caught up on the casts and what they look like, sometimes I can't concentrate on the movie. In general though, I like horror movies about haunting/ghosts much more than serial killers.

22 Jump Street 10 tomatoes
Dir: Phil Lord Star: Channing Tatum
How many more of these terrible movies will Channing Tatum play in? He is lucky he is so damn hot. When it comes to bad movies with no story line and no purpose, this movie takes the whole freaking bakery. "What the hell was that?" is exactly what I said when the movie ended. Every single second of this movie was so bad, I don't have any other way to tell you it was bad, other than telling that it was bad. Even if you like Channing Tatum and just want to watch him and don't care about the quality of the movie, I still wouldn't recommend it. Do me and yourself a favor. Watch White House Down instead. He is still so hot and the movie sucks a little less.

Friday, March 6, 2015

wumpanのある日の日記 〜ノスタルジック編〜

たっちゃん♥

9:20am 「ゔっ...」同じベッドで寝ている私の愛娘、わんこのタッチダウン、たっちゃんに頭を蹴られて目が覚めた。水曜の夜からスタテン島のマシャルのお家に泊まっている。何の前触れもなく月曜からサンフランシスコに一人旅に出ている旦那を、甲斐甲斐しく家で待つなんて、到底柄じゃない。そっちがその気なら、こっちにも考えがあります。ひとまず実家に...なんて大それた事じゃないけど、しばらくマシャルにも、こっちの友達にも会ってないからちょうどいいかと思い、水曜の夜に車を飛ばして来てしまった。昔住んでいたとは言え、部屋は改装工事がなされて、ソファーから引き出す様になっているベッドも、簡易型でも結構快適で、こうして9時過ぎまで寝てしまったという訳だ。最近、心身共に疲れ気味で、この歳になってもお子様の私はそれを上手に隠して振る舞うことが出来ないらしく、水曜の ミーティングでも、周りの人に大丈夫かと尋ねられてしまった。本来なら、今週も色々とあるのだけれど、それまで抱えていた仕事を全て無理矢理火曜に片付けて、後は全てすっぽかす予定だ。時間や、期限のプレッシャーがないということが、これほど有り難いものだったのかと、まだ寝ぼけた頭で考える。考えながら薄目を開けてたっちゃんの方を見ると、私の顔を覗き込むようにしてこっちを伺っている。あまりの可愛さに笑みがこぼれそうになるのを敢えて我慢して、また目をつぶる。ここで安易に「おはよう」などと話しかけたら、遊んでくれ、かまってくれと言わんばかりに私にとびかかってくるに決まっている。目をつぶったものの、どうしているか気になって片目だけ開けてみる。たっちゃんは相変わらず私を覗き込んでいたようで、目が合うと嬉しそうに尻尾をブンブン振り回し、鼻を私の開けた片目に突っ込んできた。「イタイ、イタイってば!!ハイハイ、起きます、起きます。」3月6日、午前9時28分、こうして私の一日が始まった。

10:45am しかしこの家には調味料が何もない。いっそ清々しい程何もない。短期で留学している女の子2人とマシャルはいったい毎日何をどうやって食べて暮らしているのだろうか。私が来るからといって、白身の魚を買ってくれたはいいものの、もともと淡白なこの魚、どう調理してくれよう...
ふてくされ半分、甘え半分で、もう今週仕事はしないと言ったものの、やはりクライアントから連絡がくれば断るわけにはいかない。どうか何もありませんように。大げさに、祈るような気持ちでメールをチェックする。仕事がらみのメールがないことにホッとすると、おなかが減ってきた。3日前のキックボクシングのクラスから、未だ立ち直れない筋肉痛の足を引きずりながらキッチンへ。戸棚や冷蔵庫を物色した後、白身魚とにらめっこすること数分。なんとか塩はあるが、棚の奥から引っ張りだしたコショウは何年前のものか分かったもんじゃない。コショウって腐るのかな...ググってみようかとも思ったが、なんだかバカバカしくて、ベタベタした瓶ごとゴミ箱へ放り込む。ベーキングシートの上に魚を横たえ、カウンターの側にあった、ひからびたライム2つを半分に切って力任せに絞る。その後ハーブ入りのパン粉をまぶしてオリーブオイルを数滴たらしてオーブンに入れる。おいしくなくてもいいから、せめておなか痛くなりませんように。朝っぱらからギャンブルな上にヘビーだが、仕方ない。買い物に行こうかとも思ったが、連日の雪で車を出すのも、そのために車に積もった雪を払うのも億劫である。冷蔵庫に入っていたサラダを引っ張りだして、焼けた魚を上にのせたら以外にもカフェ飯っぽくて満足。そんな一時の優雅な気持ちはどこへやら、日頃のクセで、シンクの脇で慌ただしく食べてしまった。
嗚呼、悲しき主婦の性...

ドラえもんにゴン太君、
スケジュール帳、
そして明らかに私のサイズではない
上履き(しかも青)。
私は病んでいたのだろうか
1:30pm 昨日から連続でつけ続けていた映画、Pacific Rim の爆破シーンの轟音で目が覚めた。エセカフェ飯の後、 メールを再度チェックしたり、たっちゃんと遊んだりしているうちにまた眠ってしまったようだった。平日の昼間から食っちゃ寝るとは私もいいご身分になったものだ。せめてもの罪滅ぼしと自分への言い訳のために洗濯をすることに。ベースメントに言って自分の洗濯物や、マシャルのもの等、テキトーに放り込む。周りを見渡すと、ダンボールや、洋服、シーツ等が雑然と積み上げられている。その山の中に、懐かしいものを見つけて、思わず手を伸ばした。昔読んでいた小説や、着ていた服、UFOキャッチャーで 釣った景品...つでに昔のスケジュール帳まで出てきた。 思わずテンションが上がり、無邪気にスカートやシャツに腕を通す...キ、キツイ...あげくに露出が多い。20代の、向こう見ずなクセに、ヘンに純情だった日々を、ピチピチのシャツを着たままで思い返す。色々あったな。突然好きでもない男から、「ありさちゃん、ごめん。」と謝られ、咄嗟に意味が分からないまま「はい、どうも。」と返事をして、数日後にやっと、彼の言葉の意味を理解する。あれはいわば、願書を出してもいない、
あげくに3流大学から不合格通知が来たようなものだったのだとワナワナ震えても、
時、既に遅し。てゆうか私は、彼に対してあなたが好きですビームをだしていたのだろうか、それともむこうの勝手な妄想に巻き込まれただけなのか、いや、待て、断るくらいなら妄想するんじゃねー!!と勉強そっちのけで1週間程時間を無駄に過ごしたこと、昔の彼氏から、「お前の誕生日のプレゼントは、サプライズだ。ヒントはサイズがあること。」と言われ、こりゃ絶対指輪だと思ってワクワクしながらもドキドキ待っていたら、渡されたのが自転車で、これで大学に通って少し痩せろと言われたこと。ホントなら辛口の冷酒をがぶ飲みしたいところをグッと抑えて、「私飲めないんですよねー。」似合わない乙女感丸出しで1杯15ドルもするピンクのカクテルを頼んでたこと。走馬灯というよりは、ぶつ切りの8ミリビデオを観ているような感覚からハッと我に返る。着古した部屋着の上にぱっつぱつのシャツを着て、ジッパーが半分だけ上がったスカートを腰に巻き付けている自分を見下ろす。気がつけば洗濯サイクルはもう終わっていた。

2:45pm 昔の自分とのプチ同窓会気分のままに荷物を片付けていく。古いものは、プラスチックの箱のフタが外れた所から水が入り、ダメになってしまっているものが多々あり、ゴミ袋に突っ込んでいく。今ではもう思い出すこともできないような小さな失望や努力、楽しかったことや嬉しかったことが、壊れた写真立てや、シミがついて着られなくなってしまった洋服1つ1つに染み入っているような気がして、捨てるのが惜しくなる。そんな気持ちを振り切るように、私は音を立てて、わざと乱暴にゴミ袋に叩き込んだ。

4:00pm 埃っぽいベースメントに2時間もいると、いい加減喉が痛くなってきた。目もしばしばしてきたし、心なしか腕や足が赤くなっているような気さえする。メンタルの面では昔よりかなり強く、というか図々しくなって、今なら飲み会で軟骨の唐揚げ片手に芋焼酎ロックでガンガンいける自信があるし、自転車をくれた元彼氏の Mr. Jackass は2、 3発竜巻旋風拳をお見舞いしてやれると思うのに、はっきりと、そして着実にカラダが弱くなっている。去年は、多少のストレスから、外の冷気や、冷水に触れると、カラダの全てに蕁麻疹が出たし、筋肉痛は完治までに最低3日かかるし。多少のやるせなさを抱えたまま、区切りのいい所でゴミ袋をまとめて、外に持っていく。手を洗って、汚れた水がシンクに流れているのを見ていると、なんだか気持ちまでスッキリするようで、
「私も単純だね。」自嘲気味にたっちゃんに話しかけると、彼女は私を見上げて、
嬉しそうに尻尾を振った。

茶色がビンゴ君。
白とベージュがしーちゃん。
6:00pm マシャルの家の犬、ビンゴとシーナ(しーちゃん)の爪を切って、ビンゴを風呂に入れる。私が引っ越してから、どちらの犬も急激に太った。こうなったらもう犬じゃなくて馬なんじゃないかという程太った。暴れる馬、いや、ビンゴ君を自分の腰をかばいながら持ち上げ、風呂桶に押し込む。お湯をかけてやると、私の顔を見上げながら、クゥ〜ンと情けない声を上げて抗議する。もしも誰かが、私を洗ってくれると言うなら、着ているものをすぐさま脱ぎ散らかしながら、一目散に風呂場に駆け込むであろう。お金だって払いたいくらいだ。そんなにありがたいことを、この犬は分からないらしい。
「果報者め!! 世の中には、シェルターに住んで、貰い手のない犬がワンサカいるんだぞ。それをこんなブー太君になるまでえさもらって、爪切ってもらって、お風呂にまで入れてもらってるのに...大体アンタは...」小さい頃に食べ物を残すと、きまって聞かされた「アフリカでは飢えてる子供が...」スピーチに近いお説教をビンゴに諭す。汗とビンゴの毛で、この時点で犬より私の方がよっぽど汚い。閉めたドアの外では、たっちゃんが「何してるの~?私も仲間に入れて!!」といわんばかりにドアに爪をたてながら鳴いている。私がこの中でしていることを知ったら、絶対近寄って来ないくせに。アイツにシャンプーの泡でも鼻にひっかけてやろうかというイタズラ心がちらっと湧いたとたん、まだ泡まみれのビンゴが逃走を図る。巨体からは想像がつかない程の素早さで風呂桶から飛び出すと、ドアに向かってダッシュ。首根っこをつかんで捕まえたものの、体重の重さと、泡まみれで滑るのでなかなか持ち上がらない。
私は、色々なことから少し距離を置くためにスタテンに一時避難してきたのではなかったのか。それなのに私は一体何をしているんだろう。ベースメントの掃除をしたことで調子に乗っていたのか、少しの親切心を出して犬を洗ってやろう等と思うんじゃなかった。 ビンゴの半分しか体重がないたっちゃんでさえ、家で洗わずに、ペットショップのセルフの設備が整った所で洗ってるのに。泡と毛と汗まみれの自分と、どうにかして逃げてやろうと風呂場のタイルの上を、滑りながらもウロウロするビンゴを見つめながらそんなことを思う。ただ今絶賛後悔中だ。暖房も入って、サウナみたいな風呂場で朦朧とした意識を、気合いと意地で叩き起こす。なんとかビンゴを洗い終わり、自分も風呂に入ってヨロヨロと部屋に戻ると、濡れた頭も乾かさないまま、タオル1枚巻いたあられもない格好で部屋のソファーに横たわる。部屋のカーテンが半分開いているが、閉めに立ち上がるだけの力は残っていない。見たい物好きは見ればいい。近くのリモコンに手を伸ばして、本日7回目になるPacific Rim を再生した。

9:00pm 留学生の女の子が体調不良で、固形物が食べられないというのを聞き、すぐさま車に乗り込んで近くのスーパーへ。あんなに面倒だった車の雪かきも苦にならない。これが母性本能というものなのか。スポーツドリンク等を買って、帰る前にガソリンと、車の窓ふき用クリーナーを購入。その場でボンネットを開けてクリーナーを注ぎ入れる。きっとそれ位、車を運転する人なら誰でもできることで、何を今更、という感じでも、不器用で、機械オンチの私にしてみれば鼻が高い。寒い中、始終締まらない顔で作業を終えた。家に戻って、彼女に買い物袋を渡す。彼女は嬉しそうな顔で受け取ると、ありがとうと言ってハグをしてきた。その後、英語のことで相談に乗ってくれと言われ、2時間以上、彼女に悩みを打ち明けられた。自分はシャイだから、周りに上手く打ち解けられないといいながら、2度程しか面識のない私に饒舌に色々語る。私がウンウンと聞くからなのか、これも英語の勉強のためと、勇気を出して私に打ち解けようとしてくれているのか、マシャルのようなばーさんよりは、私みたいなオバハンのほうがまだましと思っているのか。的確なアドバイスが出来たかどうかは定かではないけど、自分も通ってきた道だし、15になるかならないかの彼女を見ているうちに、妹を持つってこんな感じなのかな、なんて思いながら話をしていると、時計はもうテッペンを指していた。いつ帰ってしまうのかと聞かれ、日曜の朝に帰るつもりでいるというと、「帰らないで欲しいな」と可愛いことを言ってくる。この子も何年かしたらそんな台詞を彼氏に言うんだろうな...てゆうか私もいい男に言われたい。時間帯と、今日1日からくる疲労のせいで、思考が変態路線まっしぐらになろうとする。おかしなことを口走らないうちにと、膝を叩いて立ち上がり、みんなにおやすみを言って下の部屋におりた。

何か飲まないと1日が
終わった気がしないなんて、
私も重症らしい。
2:20am 部屋に入るなり、待ってましたとばかりにたっちゃんはベッドの上にジャンプする。私は彼女に目をやりながらソファーに座り、本日、実に10回目となる Pacific Rimを再生した。今日だけでも、しつこい程この映画を見ている。一回毎に終始見ている訳ではないが、それでもこの回数見ている。同じ映画と本は、なぜこう何度も見たり読んだりする度にホッとするのだろう。
それにしても、どうして何も持って来なかったんだろう。私としたことが、焼酎はおろか、ワインすら持って来なかった。ああ、今ここに日本酒があったらどんなにいいことだろう。あまり暖房の効かないこの寒くて暗い部屋で、夜中に独り、寒さありきの冷酒があれば...酔いに任せてそのままソファーで寝落ちして、次の日には風邪をひく覚悟すら出来ている。疲れたけど、まぁまぁいい1日だったし、今日はもういいか。明日近所でワインを買ってこようか、それともミツワまで足を伸ばして日本酒買ってくるのもいいかも。膨らむ夢に浮かれた気分になるものの、いくらなんでもこの部屋で、裸足に短パンの自分の格好は寒すぎる事に気がつく。Pacific Rimをぼんやりと観ながら、眠りに落ちる前に、もう1度再生することがあるのだろうかと考えながら、たっちゃんを起こさないようにベッドに潜り込んだ。
ハマり過ぎ。